会長挨拶

 「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」を意味するVUCAの時代に、更に追い打ちをかけた2020年日本に初上陸した新型コロナウイルス(COVID-19)感染症は、2022年12月初旬現在第8波を迎え、看護界は再三に及ぶ先の見えない状況での不安と闘いの日々を今生きています。
 まして、看護界は慢性疾患、複合疾患、認知症、介護依存度の高い後期高齢者の急激な増加と多死社会そして少子化を迎え、不安要因が幾重にも重なっています。 まさしく逆境です。このような中でも、看護師は果敢に立ち向かい人々の健康を支える力となっています。逆境に立ち向かう力、それは一つひとつの困難を乗り越えるたびに培ってきたどの職種にも勝る力でありレジリエンスそのものです。
また、看護師の持つ潜在的能力を限りなく引き出した結果、新しい何かを構築する創造力が各々の効力感を飛躍的に向上させています。これは看護師個々が持つポテンシャルそのものです。この2つの力は、看護界の今なお続く危機をチャンスととらえ、現状を打破しつつ、働きやすい職場づくりに大きく貢献しているのです。  そしてコロナ禍で、どの人も感じるやり場のないストレスの影響が各種ハラスメントを助長し、看護現場にさらなる苦悩をもたらしています。その上、社会との行き来が大きく制限される医療現場で失われた看護学生の実習機会は看護師育成の足かせとなっています。
また、無限に増えた看護師の仕事量は看護の本質までをも揺るがす事態になりかねず、今こそ看護のタスクを根本的に考える機会となっていることは確かです。タスクを改めて見直しシフトやシェアすることは、看護職の働き方改革につながり、看護職がベッドサイドで患者に寄り添う時間を増加させ、医療安全・感染対策の提供を確実なものとしていきます。結果、看護の質は向上し、患者さん及び看護職の互いの幸福につながると信じています。  このように異常な事態を乗り越えながら看護を提供している看護集団の夢と希望にあふれる現場づくりへのヒントが少しでも見いだされることを願って第16回看護実践学会を創り上げたいと切望し、ご挨拶とさせていただきます。

2023年2月吉日

第16回看護実践学会学術集会
大会長 中瀬 美恵子
(医療法人社団浅ノ川 浅ノ川総合病院 副病院長)